2012-01-14

還るべき場所 / 笹本稜平

還るべき場所 (文春文庫)還るべき場所 (文春文庫)
笹本 稜平

文藝春秋 2011-06-10
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「春を背負って」が良かったもんで、引き続き、文庫になっている「還るべき場所」を。
これは凄い!好みの超弩級面白本やありませんか。

高所登山に挑む登場人物それぞれの人生観と吐露するように紡ぎだされるペーソス溢れる数々の台詞、登場人物それぞれの再起、といった「春を背負って」と共通する要素はあるものの、舞台は世界有数の高峰群が乱立する山域、次々に立ち塞がる脅威は壮絶、これはもう打って変わって本格山岳冒険小説ですね。

奥付を見てみると文庫版の1印が2011年6月10日、私が購入した分は2011年10月1日の6印となっている。早々に版を重ねているようですから、山ヤさんだけじゃなく、普通に面白本として読まれてるってことでしょう。

後半、読み進めるうち少しずつ解き明かされていく、世界第二位の高峰k2、未踏の東壁初登を成し遂げたのは日本人女性クライマーなのかも?にまつわる推察には涙するよりなし。

文庫を待ってからとしていた「未踏峰」にも手を出してしまいそう。

2012-01-09

本年初登りは雪を纏った南アルプスの女王
仙丈ヶ岳


本年初登りは南アルプスの冬期仙丈ヶ岳。
昨秋までに、周りの北岳、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山は済ませておいたものの、仙丈ヶ岳は初めて。冬山で初めてってのはどうなんやろう。まあ、そんなんばっかりですが。

6日夜出立し、戸台の駐車場に着いたのは午前3時頃。
しばし仮眠をとり、目覚めてみると駐車している車は十数台ほど。この朝、入山する人は多くなさそう。


北沢峠へ向け出立したのは朝7時過ぎ。2泊3日のテント泊装備を担いで戸台川の河原を歩き始める。


しばらく往くと最初の堰堤が。川の水は凍ってます。


進行方向に目指す先の山々が見えてくる。


平坦な道をずっと進んでいくと丹渓山荘跡に出会す。この手前辺りから登りに転じる。

沢沿いから登りに至る全行程中、細かにテープが配されているのでルートはかなり明確、ありがたいことです。


川の渡渉が何箇所かあり。いずれも凍っているので、足を滑らさないよう慎重に。


北沢峠に到着したのは正午頃、休憩時間を含めて5時間くらいの行程。
長衛荘が見えてくるも、夏とは打って変わって人気はなし。


駒仙小屋の年末年始の営業は3日までで、今季はもう終了している。
この2日とも15張ほどでしたか、20張はなかったよう。
今回は私の個人テントを持込、先だって入手したスノーフライ初使用となった。というか寒いのなんのって。
年末の西穂山行では3シーズンのシュラフでも苦にはならなかったので、こちらの方が標高は低かろうと重くかさ張る冬用のシュラフを敬遠したのだが、これが大きな間違い。二晩とも、寒さで夜半幾度も目を覚ます。行動に支障をきたすことはなかったが、ずっと浅い眠りであった。


駒仙小屋への下り道は所々で完全に凍結。これを避けるべく、少々わかりにくいものの、坂の途中から直接テント場へ下りることができるようトレースが付けられている。なので、年末年始のみ営業中の長衛荘にビールを買いに行くのも一苦労。
翌朝、登頂のため12本爪アイゼンを着けてこの坂を登るとバッチシ歩けましたね。


テン場から見えているのは小仙丈ヶ岳。8日早朝、頂頭部のモルゲンロートを眺め出発す。7時を軽くまわってますから、遅い出発となった。


五合目大滝ノ頭。ここまではずっと樹林帯の登り。


森林限界手前あたりから甲斐駒の姿が鮮明になってくる。


森林限界を越え振り返ってみると、甲斐駒ヶ岳の全容が見渡せる。美し。
視線を転じれば、富士山や北岳も。


稜線上は強風が吹きすさぶ。ここにきて頂上に辿りつけるのか少々不安になったり。


小仙丈ヶ岳に到達して小休止。360°の展望に唖然。


国内最高峰、2番目、4番目の揃い踏み。因みに、仙丈ヶ岳は17番目。


頂上へは、小仙丈カールを巻くようにして尾根筋を辿る。


小仙丈カールを眼前にして思わず声をあげてしまう。美し。


痩せた尾根道を進みます。右端のピークが山頂。


from 仙丈ヶ岳頂上。甲斐駒に鋸岳、その向こうには八ヶ岳が。
八ヶ岳には会から2パーティが入っている。あちらでもこの快晴下の山行を満喫してるやろうなあ。


from 仙丈ヶ岳頂上。中央アルプスと御嶽山が重なって、その先では乗鞍と北アルプスの連なりが。


やはり冬季であれば、頂上の人出はさほど多くない。


from 仙丈ヶ岳頂上。


仙丈ヶ岳頂上(3033m)。


こちらが仙塩尾根へと連なるのでしょうか。


頂上直下から仰ぎみて。名残惜しい。




鳳凰三山も。昨年10月にはあちらから眺めとったんやね。


テン場近くの登山口に戻る。面白かった。

9日早朝よりテントを撤収、雪がチラつく中、テン場を後にする。
往路を戻り戸台の駐車場まで。
お馴染みの仙流荘にて入浴、食事をして帰阪の途につく。

初級の雪山山行であるとはいえ、これより先の厳冬期、積雪量が増え、トレースもなく、本格的なラッセルが強いられるような状況であれば、私ごときに歯が立つものでなかろうことは歴然。なんといっても南アルプスの3000m峰ですからね。
なので、なおさら、この時期に登頂できたのは望外の喜び。
先導いただいた会の先輩には多謝多謝であります。

雪山登山の基本を踏まえての事前準備が大前提、戸台口から北沢峠往復の行程を厭わず、時期を過たず(厳冬期を避ける)、人智のおよぶところではないけれど好天の恩恵に預かれれば、後は体力勝負か、最高の雪山を体感できるわけ。
冬期仙丈ヶ岳、そのスケール感は絶大でありました。