2014-11-02

誰よりも狙われた男 / ジョン・ル・カレ

誰よりも狙われた男 (ハヤカワ文庫NV)誰よりも狙われた男 (ハヤカワ文庫NV)
ジョン・ル・カレ 加賀山 卓朗

早川書房 2014-09-10
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不覚だった。ル・カレの翻訳が出ていたとは。

本書が訳出されたのは昨年らしい。
文庫化のインターバルが短かすぎるのは、映画化され本邦での公開にあわせるとの事情かな。
単行本だと、お財布事情よりも、手軽に持ち歩き難いのがネック、手を出しにくいんである。
何はともあれ、文庫サイズでル・カレ作品が提供されるのは有難いことこの上なし。

9.11テロ以降、それぞれのお国事情はありながらも、欧米のイスラム急進派へ対抗する姿勢は緩むことはなさそう。
加えて、昨今のイスラム国を巡る非道なあり様を知るにつけ、日の本の国の市井人なりに仄かな危機感を抱きつつ、本書を紐解いたわけ。

自らの意思に関わりなく、諜報活動の駒となるべく取り込まれていく登場人物らの姿が労しい。
国家の中枢を司る公的機関、いや諜報機関であればこそ?人権に関わる事柄には厳格すぎるはずの欧米諸国であれ、裏腹に”テロとの戦い”が錦の御旗となれば正邪の区別は蔑ろ、かような行動規範が凄まじく描出されている。
いやまあ、とにかく読まされる。
尚且つとことん面白い。

巻末の解説によれば、ル・カレってもう80歳を越えているのだと。
未だ衰えることなく、混沌の国際情勢を踏まえ、知と眩惑に満ちたロマンを紡ぎだしてしまう御大の力量に今更ながら感服する次第。

さて、読み終えたんで映画を観に行きますか。

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