2012-04-13

新編 山靴の音 / 芳野 満彦

新編 山靴の音 (中公文庫BIBLIO)新編 山靴の音 (中公文庫BIBLIO)
芳野 満彦

中央公論新社 2002-04
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新田次郎の小説は読んでおりませんが、この2月に他界されたとの報道を目にしたのを契機に、以前に入手し積読だったのを先日読了す。

本書は登山家でありRCC IIの創立同人である芳野満彦さんの著作を編集したもの。
八ヶ岳での遭難の顛末に始まり、国内での初登攀行記、冬季徳沢での小屋番生活、「詩と散文詩」(とある。イラスト数点)?、ヨーロッパ・アルプスでの登行記、からなる。

高校2年の冬、八ヶ岳登山にて遭難し、同行の友人は死亡。九死に一生を得るものの凍傷により両足指を切断する羽目に。 しかして、その後も登山への情熱はやまず、冬季徳沢の小屋番生活を送りながら国内の岩壁でいくつもの初登攀達成の後、日本人初のマッターホルン北壁登攀を成し遂げる。

そんな栄光のプロフィールから勝手にイメージしてしまう勇壮感あるいは悲壮感みたいなものは、本書の軽妙な筆致からは微塵も感じられず。
その軽い文体からは、このクライマーの本質を見失いそうになるのだが、ある意味ハンデを負いながらも、常人以上の登攀を数多く果たしているわけで、何とも凄い御仁であったことか。

前穂高四峰正面岩壁項の「登攀を終えて」にある一文にはグッときてしまいましたね。
また、「喪われた岩壁」にても取り上げられていた冬季北岳バットレス中央陵登攀のエピソードが、筆者独自の視点で綴られているのが興味深い。
面白い読みものでありました。
続いては本書でもパートナーとして頻繁に登場する吉尾弘さんのにしておきますか。

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